フィラピー:シャント狭窄の治療法
By Firapy Club • 21 Feb, 2019
太陽光が当たると温かくなりますが、1800 年に英国のハーシェルは、太陽光の中に「目には見えないが、物を温めることができる部分がある」ことを発見しました。この光は、プリズムで別れた光の赤色の外にあることから赤外線と名付けられました。赤外線は近赤外線と遠赤外線に分けられます。遠赤外線は、地球上にひろく分布し、動植物に不可欠な水の振動波長3 μ m を基点に、私たちの身の周りにある物品の振動波長を含む3μ m ~ 1000 μ m までと定義されています32)。
フィラピー(Firapy, Far-infrared therapy):シャント狭窄の治療法
フィラピーがAVF に対し保護的にはたらくメカニズムは、温熱効果と非温熱効果に分けられます。遠赤外線のもつエネルギーは、皮膚表面から200 μ m のところでほとんど吸収され、熱に変わります。その熱が血液により効率よく広まり、AVF 周囲の血管と組織を温めます。こうしたAVF 周囲の温度上昇により、自律神経系を介した血管拡張が生じ、温熱効果が得られると考えられています33)。
赤血球が壊れることにより血中に放たれるヘモグロビン(Hb)、およびその構成成分のヘムは細胞に対してきわめて毒性が高いタンパク質で、血管内細胞を強く障害します。我々の身体は、このような事態を速やかに処理するシステムを備えています。血中にHb が遊離すると、ハプトグロビンというタンパク質が結合します。このHb- ハプトグロビン複合体が貪食細胞という掃除屋のような細胞に食べられて、ヘムに分解されます。ヘムはヘムオキシナーゼ(heme oxygenase: HO)という酵素によって、ビリベルジン、一酸化炭素(CO)、鉄へ分解されます。ビリベルジンはビリベルジン還元酵素によってビリルビンとなり、鉄は再利用されます。HOの1 つであるHO-1 は、ヘムのほか、酸化ストレス、虚血、低酸素、炎症性サイトカインなどによって誘導されます。このように、HO-1 はヘムを除去することにより、組織を保護する作用をもつと考えられますが、最近では炎症反応の抑制作用があることが明らかになり、ビリベルジン・ビリルビン・CO にも組織保護作用が存在することが注目されています34, 35)。
強い酸化ストレスにより組織を障害する動物モデルに対し、フィラピーを用いると、HO-1 が誘導され臓器が保護されます。一方、同じ条件に対し、温熱だけを与えた場合には、強い組織障害が起こるため、フィラピーには温熱効果ではない非温熱効果が存在することが示されました36)。
患者さんへの効果として、フィラピーには① AVF の血流量増加、②AVF 静脈側の拡張、③ AVF の1 年間の開存率の増加、④ AVF 閉塞率の減少が複数の研究を総合したメタ解析で明らかになっています37)。
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